2011年10月27日木曜日

わたしなりの発掘良品『ハリウッド的殺人事件』(2003)

ハリウッド的殺人事件(2003)
Hollywood Homicide
監督:ロン・シェルトン


ラップのグループ4名がライブハウスで殺害されるので、殺人課のギャヴィラン刑事とその相棒のコールデン刑事が捜査に乗り出す。話がおおむねハリウッドなので背後には芸能系の陰謀などが存在したりするけれど、そちらの話を追いかけるつもりで見始めると見事に肩透かしを食らうことになるであろう。この映画の面白さは捜査活動よりもむしろ刑事たちの日常にあって、ギャヴィラン刑事は副業で不動産屋を営んでいて、資金繰りがうまい具合にいかなくてどうやら破産しかけているし、若いコールデン刑事は俳優への夢を追い続けていて、少々いかがわしいヨガ教室を副業で営むかたわら、自力で劇場を借りて「欲望という名の電車」の公演にこぎつけ、自らスタンリー役を演じて壮絶な大根ぶりを発揮している。どちらの刑事にしても日々の生活を送るのに忙しくて、事件の捜査はその合間にやっているという雰囲気なのである。
だから捜査活動を進めていても、日常の介入がなかなかに激しくて、誰も事件に集中できないし、優先順位もしょっちゅう入れ替わる。犯人追撃の真っ最中にも不動産売買のクライアントから携帯に電話が入ったりするのである。そういう有様を、まずギャヴィラン刑事のハリソン・フォードがいくところまでいってふてぶてしくなって怖いものはあまりないという風情の淡々とした演技をしてみせると、コールデン刑事のジョシュ・ハートネットが仕事にいまひとつ関心がないので怖いものはあまりないという風情の淡々とした演技をしてみせる。まわりの警官たちも同様で、非番になるとバイトをしているし、内務調査班の刑事は私怨を晴らすのに忙しい、という具合で、周辺の人物までよく目配りをした芸のこまかい脚本をスピード感のある演出で映像化していて、これはなかなかにおいしい映画に仕上がっている。しかも冒頭いきなり逮捕されて抗議しているイギリスの役者がエリック・アイドルだったり、老プロデューサー役でマーチン・ランドーが顔を出していたり、ロバート・ワグナーが本人役で出ていたり、と顔ぶれも楽しめるのである。
ハリウッド的殺人事件 コレクターズ・エディション [DVD]

Tetsuya Sato