2011年10月16日日曜日

火を噴く惑星、1962年のソ連製SF映画

火を噴く惑星(1962)
Planeta Bur
監督:パーヴェル・クルシャンツェフ 


「こちらはモスクワ放送。ソヴィエト全土に放送中です。タス通信によれば、宇宙探検船シリウス、ヴェガ、カペラは2億キロの旅を終えて金星に接近中。乗員の体調は良好です」
三隻の宇宙船が金星に近づいていく。
するとそこへヒューッと音を立てて隕石が現われ、探検船カペラを粉砕する。
「こちらは地球本部、シリウス及びヴェガへ告ぐ。カペラの喪失で動揺してはならない。金星の状況を報告せよ」
計画では二隻が金星に着陸し、一隻が軌道で待機する筈だった。カペラを失った以上、計画は変更しなければならない。
「こちらは地球本部、探検はいつ中止してもかまわない」
「地球本部へ。我々はソヴィエト政府及び共産党、そして全国民の信頼に応えるために金星への着陸を敢行します」
ヴェガの着陸船が2名の隊員及びアメリカ製のロボット「ジョン」を乗せて金星に降下していく。先行してシリウスの着陸に適した地点を見つけるのだ。ヴェガにはマーシャが残り、シリウスでは隊長たちが着陸船からの報告に耳を傾ける。
「前方に山が見える。操縦をジョンに交替する」
ヴェガの着陸船が消息を絶った。隊長は決断を下す。同志を救出しなければならない。我々も着陸しよう。シリウスが金星の地表を目指して降下を始めた。
「すごい霧だ」
というわけでシリウスの乗員は夜明けを待って水陸両用の探検車に乗り込み、ヴェガの乗員を救うために金星の大地を進んでいく。途中、海を越えていくあいだにプテロダクティルスに似た翼竜に襲われ、探検車の床の栓を抜いて海底に逃れ、沈んだ探検車を引っ張ってなおも進み、上陸すれば宇宙服の姿で焚き火にあたり、探検車が乾くのを待ってさらに進む。一方、ヴェガの着陸船のメンバーはロボット「ジョン」を先頭に立てて、救援を求めて徒歩で進む。二足歩行する人間大のトカゲがぴょんぴょん飛び跳ねながら襲ってくるのを拳銃で撃退し、火山の爆発を避け、溶岩流をジョンにおぶさって乗り越えようと試みる。ちなみにジョンは丁寧な要請にしか反応しないようにプログラムされていて、自己保存機能を備えているので溶岩流を越えていくあいだにメカニズムに危険を感じれば、乗っている人間を振り落とすことも厭わない。地上で二つのチームがすったもんだとしているあいだに軌道では一人残されたマーシャが悩み始めて、自分も金星に降りていこうか、それともやっぱりやめておこうかと切りも際限もなく逡巡する。後半はマーシャが着陸したのか、それとも考えを変えて軌道にいるのかということでサスペンスが否応もなく盛り上がり、金星探検は大変なことになっていく。
笑えるダイアログ、独特の美術、ある種のセンスは否定できないSFぶり、ということで一見の価値のある作品である。気の合った仲間と一杯飲みながら、突っ込みを入れて見るのがよいと思う。
火を噴く惑星 [DVD]

Tetsuya Sato