2011年10月29日土曜日

ぞんびえいが #1 ロメロ

ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド(1968)
Night Of The Living Dead
監督:ジョージ・A・ロメロ
死者が蘇り、人間を襲うようになったので、郊外に取り残された人々は一軒の家に集まって生き延びようと試みる。終末的なプロットはうまいし、ドアの外でただならぬことが起こっているという雰囲気もよく出ていた。きわめて低予算ではあるものの、以降の流れの起点となる記念碑的な作品である。
ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド スペシャル・エディション [DVD]




ゾンビ(1978)
Dawn Of The Dead
監督:ジョージ・A・ロメロ
死者がよみがえって人間を襲って食べ始めるので、死者との戦いに疲れたSWATの隊員はTV局のクルーとともにヘリコプターに乗って都市を逃れ、郊外に到達して死者に占領されたショッピングモールを発見し、そこから死者を駆逐して自分たちのための安全な場所を確保するが、そこへ暴走族が襲いかかり、暴走族がこしらえた突破口から死者の群れがなだれ込み、仲間もまたゾンビとなってよみがえり、生き延びた者はあふれる死者を前に新たな突破口を切り拓く。残酷描写だけのゲテモノ映画ではなくて、いちおう作家性を備えた作品である。ただ、ストレスを表現するのに全員でチェーンスモークするだけ、というのは、もしかしたら芸がないような気がする。
ゾンビ ダリオ・アルジェント監修版 HDリマスター・バージョン [DVD]




死霊のえじき(1985)
Day Of The Dead
監督:ジョージ・A・ロメロ
よみがえった死者の勢力の前に文明は事実上崩壊し、地下に設けられた軍事基地ではわずかに残った兵士たちとわずかに残った科学者が代わり映えのしない対立を続け、マッドサイエンティストは死者の再教育を試みる。『死霊のえじき』とはひどい邦題だが、ここまでのシリーズの中ではいちばんの出来だと思っている。人間はあまりにも醜いので、どうかするとゾンビのほうが人間よりも人間らしく見えるのである。ただ、ストレスを表現するのに全員でチェーンスモークするだけ、というのは、もしかしたら芸がないような気がする。 
死霊のえじき 完全版 [DVD]




ランド・オブ・ザ・デッド(2005)
Land of The Dead
監督:ジョージ・A・ロメロ
生き残った人類はひとつの都市を要塞化し、金持ちはモダンなタワーで暮らし、貧しい人々はスラムに押し込まれ、傭兵たちは周辺の町をまわってゾンビを殺しながら食料などを集めている。町の支配者カウフマンがデニス・ホッパー、そのカウフマンに与して上昇志向を見せるチンピラがジョン・レグザイモ、そのあいだに立って良心らしきものを代表するのがサイモン・ベイカーである。ゾンビのほうは何やら少し賢くなって武器を使い、リーダーシップを発揮する死体が現われ、仲間が破壊されると嘆きを叫び、ときには寒空の下で白い息を吐き出して、それでは全然死んでない。ゾンビ映画のロケを寒いところでしてはいけない、ということであろう。キャラクターは成立しないまま投げ出され、社会対立も人種対立(人間対ゾンビ)も未消化のまま、ドラマは最後まで低調に終わる。『ゾンビ』のリメイクである『ドーン・オブ・ザ・デッド』に見えたような視覚的なダイナミズムもなければ、『ショーン・オブ・ザ・デッド』のような一歩先へ進めたひねりもない(ロメロにあるとは思わないが)。凡作である。 
ランド・オブ・ザ・デッド ディレクターズ・カット [DVD]




ダイアリー・オブ・ザ・デッド(2007)
Diary of the Dead
監督:ジョージ・A・ロメロ
ピッツバーグ大学の学生たちが卒業制作のために山に入ってホラー映画を撮っていると、死者が動き出して人間を襲っているというニュースが入るので、それまで卒業制作の映画の監督をしていた学生がカメラを抱えて記録を開始し、仲間がゾンビに襲われていても助けるのを拒んでカメラを回し続ける。またしても一人称視点だが、後半、カメラが複数になり、監視カメラの映像も加わり、編集され、音楽が入れられていることが劇中で明言されている点で 『クローバーフィールド』や『REC』のような映像とは大きく異なる。報道メディアの映像による情報の歪曲についての批評性がどうやら起点に置かれ、そこから分岐して現われるインターネット上の画像の主観性に対する批評性も加えられ、登場人物もゾンビへの恐怖に動かされて、というよりも、もっぱら批評的に行動するため、とにかく批評的な映画になっていはいるわけだけど、それが面白いかと言うと話がいささか異なってくる。ただ、よくわからないところにもぐり込んだ 『ランド・オブ・ザ・デッド』 に比べるとロメロの映画の原型に近いような気もしないでもない。 
ダイアリー・オブ・ザ・デッド プレミアム・エディション [DVD]




サバイバル・オブ・ザ・デッド(2009)
Survival of the Dead
監督:ジョージ・A・ロメロ
『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』で追い剥ぎをしていた州兵が仲間とともに島に渡ると、その島ではオフリンの一家とマルドゥーンの一家が宿命的な対立をしていて、ゾンビの問題でも一方は処分する、もう一方は共存をはかるということで鋭く対立することになり、頑固さではいずれ劣らぬ双方の家長を筆頭に殺し合いを始めると、これがなにしろ田舎のことなので見た目にはまるっきりの西部劇になるものの、対立の起源が一度も明示されない上に当事者のモラルも素通りしてしまうので、対立という表層だけがなんとなく浮いているという有様になり、本来なら見えてくるはずの煮詰まった様子が見えてこない。あきらかにコメディを狙った瞬間がいくつか見えるが、それも成功しているとは言い難い。
サバイバル・オブ・ザ・デッド [DVD]




ザ・クレイジーズ/細菌兵器の恐怖(細菌兵器に襲われた町) (1973)
The Crazies
監督:ジョージ・A・ロメロ
細菌兵器を輸送中の輸送機が墜落したか何かで小さな町が汚染される。バイオハザード宇宙服に身を包んだ陸軍の兵士が町を占領するが、細菌に感染した住民はすでに凶暴化しつつあった、というような話で、それを淡々としたドキュメンタリー調に仕立て上げている。英雄不在の時代が色濃く反映され、そこにロメロ風の虚無感が加わってそれなりに見ごたえがある。 
ザ・クレイジーズ [DVD]


Tetsuya Sato